この間、中国に行ったときの話をしようか・・・

その前に、それまでの経緯を説明しないとな。俺はＪＵＮ。ニューヨークじゃ、
チョット名の知れたショー・ダンサーさ。フリーだから、呼ばれれば、世界中
どこへでもとんで行って、ダンス、歌、と何でも見せる。それが俺の仕事だ。

この間の中国行きは、向こうの大富豪に呼ばれて、大きな催しの余興に
出演してくれって話だった。一人じゃなんだから、何人か適当に選んで
チームを組んで来いって言われたんで、同じダンサー仲間のガイ、キリ、
ミズ、ミエの４人に声をかけて一緒に行くことにした。４人とも若いけど、
実力のある、なかなか気のイイ奴らで、今までも時々同じ仕事をしたことが
あったから、心配はなかった。

向こうでの仕事は、思ったよりハードだったけれど、俺たちはいつも通りに
こなした。特に５人揃ってのジャスメドレーは人気で、何度もアンコールが
あった。主催者も気を良くして、客としてもパーティーを楽しんでいくようにと、
言ってくれた。

窓の外には怖いほどに綺麗な満月が、輝いていたよ・・・

出演が終わって、まだパーティが続く会場に俺たちは、客として参加した。
ガイは飲んでるし、キリは食ってる。ミズとミエの女性コンビには、招待客が
群がって賛美の嵐だ。俺の周りにも女性客が群がっていたが、客あしらいも
仕事のうち。興が冷めない程度に距離を取る。いちいち相手をしていたんじゃ、
体が持たないからね。

そのうちバンドの奴らが、ワルツを弾き出した。このクラスのパーティに招かれて
いるなら、ワルツくらい大抵は踊れる。みんな、思い思いに手を取り合って踊りだした。
俺は遠慮しておこうと、立ち去りかけたその時に、一人の女が目に飛び込んできた。
いや「女」なんて言い方は、似つかわしくない。穏やかな微笑みを浮かべた女性が、
人混みの間から、まっすぐに俺を見つめていたんだ。俺は引き寄せられるように、
その女性に近づいて、踊りだした・・・

純白のドレスに身を包んだその女性は、決して華やかではなくカスミ草のように
清楚で、それでいて、月夜に咲く月下美人のように匂う美しさがあった。踊りだして
すぐに、俺はまるで夜の湖の上で二人っきりで踊っているような、そんな錯覚に陥った。
周りの人間など、目に入らなかった。ただ、彼女だけを見つめて、時を忘れて踊った・・・

曲が終わった。彼女は俺の前で、その優しい微笑みを浮かべて立っていた。俺が
彼女にせめて名前だけでも聞こうと、口を開き書けたその時、後ろにいた男が何かに
躓いて、俺にぶつかった。一瞬、本当に一瞬、その男に気を取られて、彼女から目を
離した。そして、もう一度彼女の方を見たときには、すでに彼女の姿は無かったんだ・・・

我ながら、恥ずかしいくらい必死で彼女を捜したよ。会場中、探し回った。でも彼女は
どこにもいない。それどころか、彼女を見た人間さえ見つからないんだ。誰に聞いても、
そんな女性は見ていない、って返事しか返ってこなかったんだよ。

パーティーが終わって、自分の部屋に戻っても、俺は彼女が忘れられなかった。
ベッドの上に寝転がって、思い出しているうちにだんだん、彼女が誰だったのかと
言うことよりも、果たして現実だったのかって思いの方が大きくなっていた。俺は
夢を見ていたんじゃないか、とね。夢にしちゃ、彼女の手の温もりも、寄り添った時に
微かに香った甘い香りも、ハッキリと覚えていたけれど・・・

結局、彼女に関しては何もわからないまま、アメリカに帰国した。今はこう思ってる。
あの夜は「天女」が俺の前に舞い降りたんだ、ってね。だから多分、もう２度と
彼女には会えないんだろう・・・

いいんだ。俺の中には、彼女の微笑みも温もりも、全て残っている。思い出すだけで
幸せな気持ちになれる。それだけでも俺は、幸運なんだよ。

みなさん、ご覧になりましたか？中国北京公演・生中継。
もちろん私ももビデオ２台を使って録画しながら、
リアルタイムで見ていました(^^ゞ

今回、なんと言ってもリカファンのツボだったのは
「あちち」だと思うのですが(^o^)　私的には、
たぶん見るのは初めてじゃないかと思う、
リカさんの「典型的なデュエットダンス」が
印象に残りました。

コモちゃんと、という組み合わせもよかったですね！
同期コンビで何とも言えない雰囲気があって・・・
ビデオを繰り返し見ている間に
「そうか、このコンビはもう二度と見られないかもしれないんだ」
って思ったら、沸々と書きたくなってしまいました。

で、「中国小夜曲〜チャイニーズ・セレナーデ〜」の
誕生とあいなりました☆